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小学校に上がる日が近づいたある日、母が食卓に煮豆を出しました。我が家は大体それぞれのご飯におかずを出すパターンで、共通で取り分けるおかずは珍しかったのです。「これ食べてもいいの」と聞くと、「あなたはもうすぐ小学校に行くよね。小学校ではお箸をちゃんと持てないと女の子に嫌われるわよ。今日から年の数だけ豆を箸で取って食べなさい」意外な展開にたじろくサイトウ(笑)、でしたが女の子に嫌われるというのが何となく良くない事だと思ったので、素直に従う事にしました。当時も箸は持っていたのですがちょっとバッテン気味の持ち方をしていました。母はどうやら小学校にやる前に箸を綺麗に持てる様に教育したかったのです。
やってみるとこれが本当に辛かったです。今は矯正が出来る形状のお箸などがあるようですが当時はそんな物は知る由も無く、ひたすらレッスンです。母がこうやって持つ、というお手本を見せてくれその形を作ります。それから豆を摘もうとするのですが、すぐバッテンになってしまい掴めません。煮豆ですのでただでさえ滑るわけです。「こんなの出来る訳ないよ」と言うと母は黙って豆を箸で取って食べるのです。成功事例を見せられたじろぐサイトウ(笑)、また黙って訓練です。当時は5歳ですから5つ取れば良いだけなのですが、恐ろしく時間が掛かっていました。多分初日は20~30分やってたと思います。ご飯も冷めてしまい、終わった頃には手先に力を入れすぎたせいか、手がだるくなっていました。
正しいお箸の持ち方してますか!?恥をかく前にこっそり練習☆子供から成人女性まで使える...
それから毎日夕食になると煮豆が出てきて特訓です。出来るまで普通のご飯は食べさせてもらえませんから、疲れるのとお腹が空くのでかなり苦痛な時間でした。夕食になるのが怖いと思ったのはその時位でしょうか。毎日毎日もくもくと続ける事2週間余り、気が付けば時間も30分から15分、10分、5分となり、最終的には30秒ほどで出来るようになりました。あの「気が付いたら出来るようになってた」という感覚は嬉しいですよね。自転車に乗る事や逆上がりなど、大人から見ればささいな成功体験でも、子供にとってみれば自分という存在がキラキラと輝きだすかのような、そんな眩しい嬉しさなんですよね。
あれから月日が流れ、日常的に箸を持って食事をしています。もちろんバッテンにもならず、綺麗に持ててると思います。周りを見渡してもそれ程おかしい持ち方をしている人はいません。が、先日外で食事をしている時に、割と綺麗でスタイルも良い人がバッテンの持ち方をしていたのです。今までも高校生位の女の子がバッテンで食べてるのを見た事はありますし、それは若いし仕方ないなどと思っていたのですが、先日の女性を見て考えが変わりました。やはりお箸は綺麗に持って損はないのです。おそらく大人になると綺麗に持てるのが当たり前と思っていますので、減点方式というか変な持ち方をする人は目立つんですよね。しかもそれが割りと綺麗だったり可愛い人だったりするとショックも大きい訳です(笑)バッテン持ち以外にも手の甲を上にして食べ物を箸で取ったりと、手のねじれが気になるケースもあります(笑) 逆に考えて頂くと、結構カッコイイ男性が食事の度にバッテン持ちをして食べる、これってちょっとショックですよね。「やんちゃな少年風で可愛い」というジャッジは望めそうにありません。で何故かは知りませんがバッテン持ちの人は口を前に出すというか、猫背気味に食べるんですよね。なので余計食べてる姿が気になる訳です。やはり、綺麗に持って損はありませんよね。
僕の知ってる女の子で、大学を出て会社に入る時にお箸の持ち方を特訓した人を知っています。東急ハンズなどで売っているお箸の矯正セットを買って、毎晩部屋で消しゴムやペンを持ち上げて訓練したそうです。「社会人になる前にどうしても治したかった」と言っていましたが、彼女にとって大人になる上でのコンプレックスだったんでしょうね。その話を聞いてちょっと感動しました。いつでもその気になればお箸の持ち方は治せると思います。とびきり美しく持つ必要はありませんが、ご自分でバッテン持ちなど気にされてる方は、是非一度トライしてみてはいかがでしょうか。出来た時には、5歳の時の僕が感じた眩しい嬉しさが待ってると思いますよ。案外自分に自信を持つにはそういう綺麗なお作法をマスターする事も大切だと思います。最後に、綺麗な箸の持ち方を根気強く教えてくれた母の愛情に感謝したいと思います。今になって分かる、親の有難さというやつですね。
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